「土方、覚悟!」

「天誅----! ! !」

「死ねぇえええ! !」

 

土方に流派なんて無い。

これは殺し合いだ。

土方は脚も使えば、柄さえ使う。

 

(カンカなら負けねぇ)

 

一斉に切りかかってきた男たちに、見覚えすらないが「幕府の犬」と罵られる真撰組の副長と見ては、目を付けられていたのだろう。

おそらく今日が土方の非番であると知っての計画的な犯行-----

鉄を鋭く研いだ刀がガチリガチリとぶつかり、キンと高い音を馳せながら交じり合う。

二、三度、空を切ったあと、土方の刀が男の腹部にドッど鈍い音を立てて突き刺さった。

 

皮膚から、内臓から、肉までもを一突きにされ、男の体が「ビク!ビク!」と大きく痙攣する。

 

「ぅぐ・・・・っ」

長い刀身は男の体を抜けて、腰の後ろからその刀先が突き出していた。

スッと刀を引くと、男は体血を残してドサリと土方の足元に転がった。

生まれたての屍骸の周りに男の血がみるみるうちに広がって・・・

「お互い、短命な生き方だな」

その様を見下ろし、土方はぽつりと呟いた。

雲に隠れていた月が、土方の白眼に映りこむと、彼自身こそが牙を持つ獣の様に野性的に刀が振り踊る。

先程の流れる様に舞っていた太刀筋とは真逆に、重さを増した土方の刀が目の前の男の体とぶつかった。

「ぐぁあ・・・!ぅ・・グッ・・・」

ギギギ・・・と人間を大きく斬る時にしなる刀の、あの独特な音が、空気に混じる。

右肩から左腹部までを深く切り込まれた男は、その体から噴出す血飛沫に顔中を埋めていく。

「・・・!っっっ・・・! ! !」

男が口をパクパクさせながら何かを叫んでいるが、結局、最後まで土方の耳には聞き取れぬまま、また一つ屍骸が転がった・・・・。

 

あっという間に最後の一人となってしまった男は、目に映る赤の景色の威力に全身を震わせている。

「侍なら、最後の一人になろうと闘うべきだろ・・・」

土方の口から零れた一言は、頭の中にかつて「白夜叉」と恐れられた伝説の侍の姿がチラついたからだ。

 

「チッ・・・」

 

男は立つことも儘ならず、両膝を地面に就いて縋る様に土方を睨む。

「助けてくれ」

最早、情けのかけようもない。

この男もあと数刻でこの赤の景色の一部になる。

せめて一思いに逝かせてやろうと土方が柄を握り返したその時-----