(・・・・・)
(・・・・! )
初めて見る土方の表情に、銀時は息を飲むが、よく耳を澄ませば、土方は異常なくらい短い呼吸を何度も繰り返していた。
「どぅ・・・して・・っ・・オメェが、ココに・・ぃる・・ん・・だょッ?」大小の声で問われるが、過呼吸ぎみなのか、土方の足元がだんだん覚束なくなる。
銀時は答えずに「ゲホ・・・!ゲホッ・・・」と苦しそうな土方を見下ろした。
まざまざと顔色が冷めて、ブラックダイアの瞳が雫で滲んでいく・・・
「・・く・・るし・・・」
銀時は黙って土方の肩を抱き寄せた・・・・・
今度は優しく包んで、土方の顔を胸に押し当てる。
(! ! ? ?)
驚いた土方の息が余計に短いものになって「ハッ・・・・ハッ・・・」と肩が辛そうに大きく上下する。
躊躇わず銀時は、子供をあやす様に土方の背中をポンポンと叩きながら
「多串くん。ほら。銀さんの心臓の音よく聞いて、おんなじ様に息してみ?」
と、そっと言い聞かせるように囁いた。
トクントクンと銀時の鼓動が土方の耳に直接伝わって、土方はそこだけの世界に耳を澄ます。
包まれている肩からも、じんわり銀時の熱が浸食してきて、土方はゆっくりゆっくり呼吸を思い出していった・・・
時をあけて吸い込まれる息が喉にしみて、何度も咳き込んでしまうが、その度に銀時は背中をさすってやる。
ゆっくり、たどたどしく彷徨った土方の指が、無意識に銀時の袖を掴んだ・・・・・。
だんだんと土方の霞んでいた視界がはっきりしたものに変わって、銀時の温度もしっかり伝わってくる。
(あったけぇ・・・・・)
「どー?おちついたか?」
(! !)
銀時が耳のすぐ側で訊ねると、腕の隙間からすっかり血の気が戻った土方が顔を真っ赤に頷くのが見えた。
土方は幾分、正気に戻ったのか、突っぱねるように腕を伸ばして、銀時の身体を突き放す。
「わりぃ」
俯いたまま、照れくささと悔しさと、素直に感謝の気持ちで、土方は銀時の顔をまともに見れずにいる。
「本当にケガしてねーの??」
土方の赤面っぷりに気付いている銀時が、からかって土方の顔を覗き込もうとするが、土方はそれを嫌がってすっかり背を向けてしまった。
今は土方本人も信じられないほど体中が熱い・・・・。
「何、照れてんだか・・・・」
「照れてねぇ! ! !」
「そーですか〜〜」
「・・・・テメェ・・・・」
「ハイハイ。んじゃ帰るよ」
銀時は土方の手を改めて握りなおし、路地裏から出ようとする。
ぐいぐいと引っ張られて、さすがの土方も慌ててしまう。
「ちょっ!・・どこ行く! ! ?」
前方の銀髪はそんな質問お構いなしに、すたすたと歩くスピードをあげる。
「オイ!聞けよ!屯所は逆っ・・・」
前のめりになりながら土方がそう叫ぶと、ピタリと銀時の歩みが止まった。
振り返った銀時がまじまじと上から下まで眺めてくる。
「ダセーかっこしてんじゃねぇよ」
「! ! ?」
「そもそも多串くん。その格好でお家帰って大丈夫なの??」
土方は半笑いで言われムッとしつつも、己の身体を見てみるとさっきまで倒れ込んでいたせいで、全身に土や血がこびり付き、とても表を歩けた格好ではない。
ましてやこのまま屯所に帰ろうものなら、近藤を始め、他の隊士が何て騒ぎ出すか・・・・
特に沖田あたりには「良い様ですねィ」と一生揚げ足取りに使われそうだ。
(・・・・・・・・)
「ウチおいで、着替え貸してやっから」
ああ。それで手を引っ張られていたのかと、土方はそう思ったが、どうにも握られた手が恥ずかしくて落ち着かない。
(今すぐ振りほどきたい!)
でも--------
何故かそれができない・・・・
(何なんだよ、この手は! !)
この時の土方にはまだ、そのおかしい「何か」が何であるのかは分からない。
--------結局、土方は悶々と考え込みながら、前方の銀髪を睨みつつ彼の家まで、手を引かれて行くこととなった・・・・・
注意:この続きはオフラインで紹介している「feel」に収録しています。